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傘のシェアリングサービスで「経済とエコは両立できる」の証明に挑戦する丸川。まず目指すのは、年間8,000万本のビニール傘消費量をゼロにすること。

傘のシェアリングサービスで「経済とエコは両立できる」の証明に挑戦する丸川。まず目指すのは、年間8,000万本のビニール傘消費量をゼロにすること。

社会起業家社会課題解決シェアリングエコノミーサーキュラーエコノミー環境負荷軽減持続可能性循環型社会

2024.10.30 公開

会社概要 - company profile

企業名:株式会社Nature Innovation Group

設立:2017

事業内容:傘のシェアリングサービス「アイカサ」の開発・提供など

推薦理由 - Reason for recommendation
家本賢太郎

家本賢太郎

チャリチャリ株式会社 代表取締役社長

突然の雨のとき、何度アイカサに助けられたでしょう。丸川さんの魅力は、ガツガツしてるわけでもないのにさらっと実現してしまう実行力。たとえば東京都心のほぼすべての駅でアイカサを見つけることができますが、見るたびにいったいどのように口説いているのかといつも不思議です。口だけでなく実行力が伴う人を指して「Executionの鬼だ」という褒め言葉がありますが丸川さんにはまさにそう。鬼同士、がんばりましょう。

これまでのキャリアと創業の経緯

─────これまでのキャリアについてお聞きできますか。


父親が日本人で母親が台湾人という家庭で育ちました。生まれは埼玉で、幼稚園のときに日本と台湾を行き来していて、小学生時代はシンガポールで過ごしました。小学6年生で日本に帰ってきて、そのまま日本の大学に進学したのですが、途中で「ちょっと違う」と感じるようになり、日本の大学を辞めてマレーシアの大学に入り直したんです。


─────大学を辞めるのはそれなりの決断だったと思います。どのようなきっかけがあったのでしょうか?


「これ!」という決定的なきっかけがあったわけではなくて、いろいろな理由がありました。


日本の大学に通っていたころ、ある友人の夢が高校の教師になることだったんです。ほかにも将来の夢を持っている友人が多かったのですが、私にはまだハッキリとした夢がありませんでした。「自分は何がしたいんだろう」と将来の夢や目標を探している時期でした。


そのとき興味を持ったのが児童福祉の分野です。子どもが好きだったというのもありますし、児童虐待のニュースを見たときに「こういうのをなくしていきたい」という気持ちになりました。


それから児童福祉関係の公演を聞きにいくようになり、「フローレンス」というNPOのことを知りました。その代表の方の「社会を変えるを仕事にする」という本を読み、社会起業家という生き方があると知ったんです。


理想を掲げ、社会の中で実現するためには、お金が必要であること。お金がちゃんとまわる仕組みをつくらないと、その理想を実現するのは難しいこと。公演を聞いたり、本を読んだりするなかで、そういうことを学びました。いろいろとインプットしていく過程で、私の興味は児童福祉からソーシャルビジネスにシフトしていったんです。


起業家の家入一真さんを知ったのもそのころです。SNSでフォローしていたのですが、流れてくるポストを見ていると、当時からいまのクラウドファンディングの原型のようなことをされていて、「すごいな」と感じていました。


家入さんについても調べていって、起業という手段があるんだ」とか「スタートアップという言葉があるんだ」とか、いろいろと知ることができました。


たくさんインプットをして自分の中の世界が広がっていった反面、大学の勉強には面白さを感じられなくなっていきました。そのころの私は何か社会の役に立つことができたら良いな」という気持ちだったので。


そこで、思い切って日本の大学を辞めて、マレーシアの大学に入り直すことにしたんです。私自身、アジアのバックグラウンドがあるから、成長中の新興国で暮らしてみたいというのがマレーシアを選んだ理由になります。


─────なるほど。背景がよくわかりました。マレーシアでの生活はいかがでしたか?


新しいサービスが次々に生まれていて、日常の暮らしがどんどん便利になっていくのが衝撃でした。車やタクシー、自転車などのシェアリングサービスも浸透していて、日本との違いに驚いたことを覚えています。


いろんなシェアリングサービスがあるなかで、ふと「傘ってないのかな?」と思ったんです。調べてみると傘のサービスはまだ存在していませんでした。そこで、「これってもしかしたら世の中の役に立つんじゃないか」と思いました。学生の思いつきではあるのですが、「サービスがないなら自分でやってみよう」ということで動き始めたんです。


─────いろいろある中で、なぜ「傘」に着目したのでしょうか?


たまたま、日本の大手企業が自転車のシェアリングサービスを始めるというニュースを見たんです。否定的な意味合いではなくて、シンプルにそのとき、「自転車もいいけど、傘じゃない?」という閃きがありました。関東に住んでいたので、個人的には自転車を使う機会がそんなになかったからかもしれません。


「傘のシェアリングサービスがあったら便利かもしれないな」というところから、ビニール傘の消費本数などを調べていきました。すると、本当にたくさんつくられていて、消費され、捨てられていることがわかりました。これはムダだし、環境にも優しくないんじゃないかと思い、同時に「専門的な技術や知識はないけど、傘のシェアリングサービスの営業だったら自分にもできるかもしれない」と考えました。そこで、事業として立ち上げてみたという流れになります。


思いつきから始まり、会員数60万人・東京の半分の駅に設置されるサービスに

─────サービスの立ち上げについて聞かせていただけますか。


事業のアイデアはマレーシアにいたときに思いつきました。そこから日本の友人に連絡したんです。「傘のシェアリングサービスをやろうと思っているので日本に帰ろうと思って。行くあてがないので泊めて欲しいんだけど(笑)」って。


彼は優しくて、しかも開発ができる人だったのですが、話をするなかで「一緒にやろう!」という流れになって。幸運にも、寝床と仲間を手に入れることができました(笑)。


あとは、クラウドファンディングで同じようなシェアリングサービスをやろうとしていた人を見つけたんです。すぐにメッセージを送って、会いにいきました。彼とも話が合って一緒にやることになり、私も入れた3人でサービスづくりを進めていきました。


最初に始めたのは、ビニール傘を集めることです。シェアリングする傘がないと話にならないので、飲食店に行き「置きっぱなしになっている傘があればください」とお願いしてまわりました。持って帰り、シャワーでキレイに洗って、それを貸し出すというわけです。そこから少しテクノロジーが入り、傘に二次元バーコードを取り付けて、Webに飛んで決済情報を入力してもらうようにして。最初は「10分1円で借りられる」というもので、サービス名は「アイカサ」にしました。


私が営業を担当して、開発は知人が進めていきました。私も検索しまくりながら、見よう見まねでコードを書いてみたのですが、思い通りに動いてくれずにまた検索をくり返すみたいな。「ああでもない、こうでもない」と言いながらやっていましたね


─────事業計画や運転資金などは、どうやって準備したのでしょう?


恥ずかしながら、最初は事業計画書やPL/BS/CFなどの財務三表などについてはちゃんと理解できていませんでした。そのため、「スタートアップ」というキーワードで検索して関連するページで勉強していきました。インプットするなかで、ベンチャーキャピタル(以下VC)とかエンジェル投資家の存在を知り、「事業の話を聞いてもらうことがあるかもしれないから、資料をつくっておこう」と準備をしていきました。


その後、HPの問い合わせフォームから連絡して、20〜30社ほどのVCをまわりました。事業について壁打ちをさせていただき、計画をブラッシュアップしていったんです。そこからさらに数十社ほどのVCをまわり、お金を出してもいいというところが見つかって、どうにか運転資金を確保することができました。


─────いよいよ実際にサービスを広げていくことになると思うのですが、どのような反応だったのかお聞きできますか?

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。