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宇宙での建設プロジェクト。AIの次の技術。100兆円企業───。多くを照らすために、大きな志を持つ野呂の、これまでとこれから。

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東大発スタートアップ組織文化若手経営者AI活用レガシー領域DX

2024.12.18 公開

会社概要 - company profile

企業名:燈株式会社

設立:2020

事業内容:DXソリューション事業、AI SaaS事業

推薦理由 - Reason for recommendation
上田來

上田來

株式会社estie 取締役CFO

外部調達を行っていないため、世間での一般的な知名度は高くないかもしれません。しかし金融機関や投資家の方々に「今注目しているスタートアップはありますか?」と聞いた時に、よく返ってくるのが燈さんです。そしてなんでも、社内では「質実剛健!凡事徹底!」といった唱和を毎日行っているとか。伝統巨大産業をDXの力で切り拓き、急激に成長する事業の裏に、若き野呂さんの古き良き日本的な経営がある。隣接する不動産業界にいるestieも刺激を受けています。

これまでのキャリアと燈を創業するに至った経緯

─────野呂社長のこれまでについて教えていただけますか。


両親とも真面目なタイプで、どちらかと言えばお堅い感じの家庭で育ちました。特に父が厳格な人で、江戸時代の武家諸法度のような守るべき掟があったんです。「人の役に立つ存在であれ」みたいな掟があって、「壱 親の言うことを聞く」といった項目がいくつかあるんです。僕は掟を守らない子どもだったので、毎年項目が増えていく感じでした(笑)。


そんな両親の影響があったと思うのですが、「自分の力で自立して生きていくにはどうすればいいか?」といったことを早くから考えていた気がします。たとえば中学とか高校のころから、自分で法人をつくるまでは行かないものの、ビジネスチックなことをやってお小遣いを稼いだりしていました。


それに、高校一年生のころからいろんなハッカソンに出ていて、プログラミングで審査員特別賞とかをいただいたりしたんです。こういったことがきっかけになって、AIとかスタートアップといった方向で将来のキャリアを考えるようになりました。


東京大学に入学したあと、人材系の会社を立ち上げました。事業としてはかなりうまく行っていたと思うのですが、自分としてはこの先もずっとやり続けていくイメージが持てなくて。僕は退任して違うことをやろうと考えたんです。そこから東大松尾研に伴走する組織である松尾研究所でAIについての修行を積み、2021年に燈(あかり)を創業したという流れになります。


─────最初に立ち上げた会社がうまく行っていたのに、なぜ退任したのでしょうか?


あくまで僕個人の感覚なのですが、「人の役に立っている実感がちょっと薄いな」という気持ちがあったんです。一社目の会社は、オンラインの広告で集客をして、オンラインで送客する。ほぼ人と関わらずに、インターネット上で完結するビジネスモデルでした。


いつもパソコンに向かい、広告が想定通りのパフォーマンスを出しているかをウォッチし続けることが重要で、個人的にはなかなか人から感謝されることがない事業だったと思っていました。もちろん、大事な仕事ではあるのですが、どれくらい社会の役に立っているのかというのが見えづらいというか、そういう感覚があったんです。そのため、燈を創業するときは「次の会社ではこれをやろう」という条件をふたつ置きました。


条件のひとつ目は、「人の役に立っている実感が持てること」です。ユーザーと直接関われる仕事をして、社会にとって意味があると心から実感できる事業をやろうと決めました。


ふたつ目は、「知的好奇心が満たされる仕事であること」。これも一社目での学びからです。最初の会社では広告を最適化することにすべてのリソースを投下していました。毎日アナリティクスの分析データを見て、「数字が悪くなっている」と思ったらクリエイティブを変更する。僕にとっては新鮮さが感じられないというか、、、。同じことの繰り返しのように思えてきたんです。


この「新鮮さ」という意味では、先端技術を扱うことで知的好奇心が満たされると思っています。世界的に見ても、毎日新しい技術が発表され、サービスが次々とアップデートされています。キャッチアップするのが追いつかないくらいのスピードで世の中は変化していて、貪欲にインプットしていかないと取り残されてしまう。そういう環境に身を置くと、知的好奇心が満たされていることを実感できるんです。


これらふたつの条件を満たす事業は何かを考えたときに、AIなどの先端技術を駆使して既存産業をDXするというコンセプトを考えつき、2021年に創業したのが燈株式会社になります。


事業も、組織も、使命である「日本を照らす燈となる」のために

─────創業期のことについてお聞きします。既存産業をDXするというコンセプトで2021年起業ということですが、当時からコンサル会社やSaaS企業など先行プレイヤーがいたと思います。その中でどのようなポジションを狙っていったのでしょうか?


僕たちはAIの可能性に賭けていた、というのが大きな違いだと思います。僕がもともとエンジニアリングをやっていたこともありますし、AIに明るいメンバーがいたということもあります。従来のロジックベースの数値的な処理から、ディープラーニングを使うことでこれまでできなかった判断や処理ができるようになっていきました。ここに大きな可能性を感じ、自分たちの武器にしようと決めたんです。


既存の業務をDX化するためのコンサルティングを提供する会社さんも多いですし、SaaSで既存業務を電子化していこうという会社さんも多いです。先行するプレイヤーはいますが、僕たちが目指したいのは、AIなどの先端技術を使って既存産業の業務を爆発的に効率化していくことです。これまで人間が判断し、処理していたことをAIに置き換え、自動化していくところに非常に関心を持って取り組んでいます。


燈を立ち上げた2021年ごろは、こういったスタートアップがいくつかあったと思います。ただ、手がけている範囲が限定的だったのではないかと考えています。複数の業務のうち、あるプロセスだけにSaaSを入れても、パッチワーク的になってしまうのではないか。前後の業務がデータ連携されるわけではないのにソフトウェアだけが増えていき、結局はソフトウェアの数だけ新たな業務が増えているのではないか。業務プロセス全体を見てみると、実はそこまで効率化されていないんじゃないか。そういう仮説を持っていました。


─────AIなどの先端技術で、産業の業務全体の課題を解決しようということですね。立ち上げたばかりの会社がその提案を行ない、顧客に価値を感じてもらうには、技術的な裏付けやそれなりの説得力が必要になると思います。そもそも、創業期はどのように組織づくりを進めていったのでしょうか。


もともとは自分ひとりで起業しようと考えていましたが、途中から東京大学のクラスメイトだった石川(現 執行役員 AI SaaS事業部長)が「一緒にやりたい!」と言ってくれて、会社を登記するタイミングではふたりでスタートしました。その後は、東京大学工学部の友人や知り合いを中心に採用していきました。CTOの三澤も松尾研究所で知り合いましたし、AIや技術の知見がある人が燈に参加してくれたという感じですね。


最初は同じ年代の仲間が集まっていたので、当時は平均年齢は20歳とかだったと思います。いまはほとんどのメンバーは大学を卒業して平均年齢はあがってきました。技術的には圧倒的な自信がありますが、会社や社員の年齢という観点では、確かにまだまだ若いと思います。


そのため、逆にその若さを最大限に使ってストレートに提案していました。当時は学生なのに、そこまで一生懸命にやってくれるなら」という感じで、提案の時間をいただいたりしていました。


─────ありがとうございます。少し話の毛色が変わるのですが、組織の風土についてもお聞きしたいです。同年代が集まり、しかもみなさん若いとなると、「みんなで楽しくやろう」といった空気が生まれる懸念もあるかと思います。そんな中で、御社のHPを拝見するとけっこう硬派な印象を受けます。

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。