ThinkD Logo

"Think different"な人や企業にフォーカスしたWebメディア

初年度に約120億円を調達し、大きな期待を背負うnewmo。やるからにはエキサイティングな道を選ぶCFO武藤の、社会課題との向き合い方。

初年度に約120億円を調達し、大きな期待を背負うnewmo。やるからにはエキサイティングな道を選ぶCFO武藤の、社会課題との向き合い方。

地方創生ライドシェア社会課題解決モビリティCFO資金調達Fintechレガシー領域

2024.09.03 公開

会社概要 - company profile

企業名:newmo株式会社

設立:2024

事業内容: タクシー・ライドシェア事業の運営

推薦理由 - Reason for recommendation
高宮慎一

高宮慎一

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 代表パートナー

newmoは、単なるライドシェアスタートアップではなく、タクシーの供給不足や地方の交通課題といった社会問題を解決するモビリティスタートアップです。テクノロジーを梃子に、法制度やユーザー習慣など日本社会に合った形で、タクシー、ライドシェア、配車アプリを組み合わせたユニークなモデルで挑みます。スタートアップやビッグテックで経営経験が豊富なメンバーとともに、エキサイティングで意義深いチャレンジをしてみませんか?

これまでのキャリアとnewmo参画までの経緯

─────どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか?


前半は金融機関。後半はスタートアップというキャリアになります。


東京大学工学部を卒業して、日本長期信用銀行(現:新生銀行)に入行し金融商品の開発などを行なっていました。その後、ドイツ証券で資金調達支援やM&Aアドバイザリーといった投資銀行業務を担当。それからスタートアップの世界に移り、直近ではプレイドという会社で経営管理体制の構築やIPOを中心とするファイナンス、M&Aなどに取り組んでいました。2024年1月にnewmoを共同創業し、4月から参画しています。


─────newmoに参画された経緯について教えてください。


newmo代表の青柳とは、実は20年くらいの付き合いがあるんですよ。ドイツ証券時代、投資銀行本部で一緒でした。当時、僕がいたチームにインターンで入ってきたのが最初の出会いでした。彼はそのままドイツ証券に入社し、その後グリーやメルカリで大活躍しました。


newmoに参画することになったきっかけは、2023年10月に青柳から「ランチしませんか?」と連絡があり、そのときにピンと来たんです。ライドシェアを始めるにあたってCFOを探してるんだろうなって。


というのも、実は過去に伏線があったんです。2017年くらいのことで、そのとき僕はみずほ証券で働いていました。彼が僕を訪ねてきて、「タクシー会社を主体としたライドシェア事業をやりたいから手伝ってもらえないか」と相談されました。しかしその当時は、青柳自身は「今じゃない」と判断し、彼は次の挑戦の場としてメルカリを選びました。


あと、これは僕自身の話になるのですが、2023年の夏に京都にいく用事があったんですね。観光客がすごいから、現地では全然タクシーがつかまらなくて、移動に関しては不便な思いをしました。そして「そろそろライドシェアについて本格的に考えるタイミングだろうな」と個人的にも感じていたんです。


過去の伏線があって、僕自身の京都の経験もあって、その後に青柳から連絡が来た。だから「これはライドシェアだな」と思ったわけです。


─────実際にお会いされて、どんな話になったのでしょうか?


予想通りライドシェアの話でした。ランチでは「ライドシェアをやろうと思っていてCFOを探している。上場経験のあるCFOが良い」という話になりました。彼の話を聞きながら、僕自身のキャリアのことを考えたんです。


そのときはプレイドで5年くらい働いていて、自分の中では「あと1〜2年くらいしたら次のチャレンジをしないといけないな」と考えていたタイミングでした。というのも、当時売上が15億円くらいのときにCFOとして入社して、最初は自分でも手を動かして作業しながら主体者としてIPOの準備を進めて上場して。上場前後で組織づくりを進めて、ファイナンスのヘッドがいて、経理のヘッドがいて、コーポレートのチームもできて、僕自身は全体をマネジメントするようになって。売上も100億円近くになったのに、自分がCFOとして居続けるのは、自分だけでなくプレイドのメンバーの成長機会につながらないと感じました。「僕がいなくならないと他のみんなにより大きな役割にチャレンジするチャンスが巡ってこないな」と考えたんです。


そして、これは自分にとっての有言実行でもありました。2022年、プレイドのビジネス部門を組織化する役割を担った時、マネージャーに「3年後には自分自身が不要になるぐらい次のリーダーを育てることにコミットしよう」と伝えたんです。それを自分自身が体現せねばという思いはありました。偉そうに聞こえるかもしれませんが、僕という傘があるから、みんな守られていると感じているんじゃないか。安心して仕事ができるのは悪いことじゃないですけど、強い主体性とか自分で決めて自分で責任を取るヒリヒリするような経験があってこそ、人はアップデートされるんじゃないか。だから僕がプレイドのCFOを退任して新しいチャレンジをすることは、自分にとってもプレイドのみんなにとっても必要な選択なんじゃないか。そういうことを考えていたんです。


自分の中では「あと1〜2年くらいしてから」と考えていましたが、目の前にいる青柳はいままさにライドシェアにチャレンジをしようとしている。なので、このタイミングで僕も決断するしかないと思ったんです。


─────青柳さんからの相談を、ご自身にとっての良い機会だと捉えたわけですね。


そうですね。仕事をする相手としてはとても刺激的だと思いました。青柳とは20年くらいの付き合いがありましたが、同じプロジェクトを一緒になって密に進めたことはありませんでした。ただ彼の仕事に対する姿勢を見ていると、ある種のクレイジーさというか、本当に周りがそれできるの?と思うような絵を描き、それをやり抜く執念や力強さは感じていました。例えばミクシィに比べて劣勢だったグリーをKDDIとの提携で一気にモバイルシフトで成功させてしまうとか。そういうちょっとぶっ飛んだ強い気持ちがないと、ライドシェアに挑戦しようとか考えないじゃないですか。


あと、「これまでの競合と戦ってきた経験がすごいな」と思っていました。グリーにいたときはソーシャルゲームで、メルペイにいたときは決済サービスで、それぞれ多くの競合と正面から戦って勝ってきた。スタートアップの傾向として競争を避けて、いかにユニークなプロダクトやサービスを提供するかというのを考えがちだと思うんです。それは正しいことではあるのですが、一方で魅力ある市場は競合がいる、もしくは参入してくるわけで、大きな市場を狙えば競争は避けて通れません。ライドシェアにも外資含めてたくさんの競合がいますし、規制などの政治的な制約もあるし、この先どうなるかわからない不透明な部分もある。そんな厳しい環境でも、彼は絶対にファイティングポーズをとり続けるだろうなと思いました。その戦いに自分も参加したら、これはちょっと興奮するなと(笑)


新しい仕事にチャレンジすることは決めていたので、あとは想定より早いかどうかというタイミングだけ。そこで「どうせやるなら、いまだな」と思って、青柳と一緒に仕事をすることを選んだんです。


─────決断をするにあたって不安はなかったのでしょうか?


不安はもちろんありました。青柳と話した2023年の10月にはそもそもライドシェアが規制上できない状況でした。自分たちの努力だけではなかなかコントロールできないことなので、ライドシェアに対する規制がどうなるかというのは確かにリスクでした。


逆に大きなプラス要素だったのはすでにPMF(プロダクトマーケットフィット)ができていることでした。程度の差はあれ、日本を除く世界各国でライドシェアの価値証明はされています。インバウンド増加などによる自動車による移動手段の需要があり、そこにライドシェアが有益なソリューションであることは間違い無いと考えていました。外部環境としての規制動向の影響はあるのかもしれないけど、そもそもサービスが市場に受け入れられないというリスクは低いと考えました。であれば、なんとかできるかもしれませんよね。


リスクがあるとチャレンジしないという人もいますが、リスクを取ることが好きな人もいます。どうなるかわからない不透明な部分があるからこそ面白い。道を探しながら、ときには道をつくりながら、目的地に向かって進んでいくプロセスを楽しめる


法制度や規制とどのように付き合っていくのかも、考え方によっては楽しめると思っています。世の中のルールをキチンと守りながら、タクシーやライドシェアの事業会社として、スタートアップ企業として、世の中のために何ができるかを考えて行動していくことによって社会から受容されて、より規制が開かれていく。規制イコール外部環境で自分たちで変えられないものと割り切るのではなく、簡単じゃないかもしれませんが、自分たちの活動が法制度・規制を動かしていく。それでも実現できたらすごいことですよね。それってとてもエキサイティングだし、大きなやりがいになると思うんです。


newmoは設立したばかりの会社ですが、すでに約120億円の資金調達をすることができました。それだけ僕らのやろうとしていることに投資家の皆様からご期待をいただいているのだと認識しています。もちろんその期待に応えるべく事業を成功させることにコミットするし、その金額に対する責任の重さを承知しております。一方で個人のキャリアの観点で考えると、もし万が一うまくいかなかったとしても、その経験自体が自分自身の価値であり、自分のストーリーになる。そう考えると、個人のキャリアの観点ではそもそもリスクは無いと思うんです。


自分の仕事人生のなかでも最も大きなチャレンジの一つですから、何も後悔しないくらい渾身のフルスイングをしようと思っています。



newmoは、自動車の移動サービスにまつわる課題を解決する会社

─────改めてですが、newmoの事業について聞かせてください。


ライドシェアの会社だと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、厳密には正しくありません。タクシーもやりますし、ライドシェアもやる。付随するフィンテックサービスも提供していく。これらが僕たちが展開していく事業になります。


ライドシェア自体は事業の目的でも我々のミッションでもありません。あくまでタクシーのような自動車移動サービスの供給を増やすための手段です。もっと言えば、その「自動車移動サービスの供給を増やす」こと自体も手段です。具体的には、タクシーの台数を増やし、ドライバーの数を増やすこと。そうすることで、崩れている需給のバランスを整え、移動に困っている人を減らしていきたい。いまよりも移動が自由になることで、日々の暮らしの不便が解消される方もいると思いますし、旅行先で良い体験ができる人も増えると思います。ライドシェアのドライバーになることで所得が増える方も出てくるでしょうし、地域の活性化にも貢献できると考えています。


─────需給バランスの現状について、詳しく教えていただけますか?


タクシードライバー数で言うと、15年前は42万人でしたが現在は23万人になっています。高齢化が進んでおり、コロナで極端に需要が減ってしまったこともあって、そのまま引退されてしまった方が多いようです。また、新規就業者がなかなか増えていないため、長期的には供給力はジリジリと減り続けています。


一方で需要を見てみると、コロナが落ち着き、大きく回復しています。都市部や観光地では乗りたいけどタクシーをつかまえられない。地方ではタクシー会社がそもそも減っていっている。呼んでも1時間待ちや2時間待ちが当たり前ですし、雨の日とかはタクシーを諦めることも多いです。


このバランスを整えるために、僕たちはまずタクシー台数を増やし、同時にライドシェアのドライバーを増やしていきます。ドライバーとして働くにあたり、ライドシェアに使う車両のリースを希望する方も多くいらっしゃいます。そういうニーズに応えるために子会社である「株式会社ライドシェアリース」を設立しました。この会社ではフィンテック関連の事業を展開し、たとえば「初期費用0円でライドシェアドライバーを始められる」といったサービスを提供していきます。そうすることで、供給力の向上につなげていく考えです。


─────競合他社との違いはあるのでしょうか?

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。