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会社概要 - company profile

企業名:株式会社コルク

設立:2012

事業内容:編集・制作支援、コミュニティ運営、マーケティング、スクール、ファンクラブ・イベント運営、グッズ制作・販売など

推薦理由 - Reason for recommendation
枌谷力

枌谷力

株式会社ベイジ 代表/CEO

佐渡島さんとは何度か食事に行かせていただいた関係ですが、物事や会話を色々な角度から眺めた上で「これだ」という仮説を迷いなく出せる方だなと、よく思います。そんな佐渡島さんが今、何を考えてビジネスをされているかを知りたくて、推薦させていただきました。

これまでのキャリアとコルク創業の経緯

─────まずはじめに、これまでのご経歴について聞かせてください。


小学生まで日本ですごしたのですが、父親が商社に勤めていたので、仕事の関係で海外に転勤することになり、中学からは南アフリカ共和国のヨハネスブルクにある日本人学校に通っていました。


中学3年の夏に日本に戻ってきて、その後高校受験をして灘高に行き、そこから東大の文学部に進みました。当時は文学の研究者になろうと思っていたので、本ばかり読んでいて、一日一冊ペースでした。


文学者になるために大学院に行こうとしていたのですが、親から大学院を目指すことは構わないが、社会を知るためにとりあえず就職活動を経験してみなさい」と言われたんです。学費を出してもらっている立場でしたから、就職活動を始めました。


出版社を受けたら、たまたま講談社に受かりまして。大学院に行きたいという気持ちもありましたが、せっかく内定をいただいたこともあったので就職することにしたんです。


講談社ではモーニング編集部に配属になり、初めて担当したのが井上雄彦さんの『バガボンド』です。まだ経験がないうちからメジャーな作品を担当できるのは、大手企業の良いところだと思っています。テレビのキー局に就職した知り合いも、早くから大御所芸人さんの番組を担当したりしていました。最初から知名度のある仕事に関われることは、魅力の一つだと思いますね。


─────講談社時代のその後についても、教えていただけますか?


マンガでは『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』などの編集を担当しました。作品もヒットしましたし、仕事は楽しかったですね。講談社は自由な社風だったので、やりたいことをやらせてもらっていましたね。


結局、講談社には2002年から2012年までの10年間勤めていて、その後、独立してコルクを設立するという流れになります。


─────編集の仕事で結果が出ていたのに、なぜ独立という選択をしたのでしょう?


出版業界や講談社という会社には、何も不満はありませんでした。独立のきっかけになったのは、『宇宙兄弟』の仕事です。映画やアニメ、イベントなどを同時にやったことがあったのですが、プロモーションも含めて全部うまくいって、個人的に「これはハマった!」と手応えがありました。でも、『ドラゴン桜』のときほど人気が爆発しなかったんです。


そのとき僕は「時代が変わっているんだな」と感じました。メディアが持っているパワーが、これまでとは大きく変わってきていると思ったんです。インターネットの力が圧倒的に強くなってきていて、SNSの影響力が大きくなっていて。クリエイターが活躍する場所も、これまでの雑誌というメディアからインターネットの世界へと動いていくだろうな、と。「新しい時代を知りたい」と思い独立することにしたんです。


「インターネット時代のクリエイターエージェンシー」というモデルづくりに挑む

─────それでは、株式会社コルクの事業について教えていただけますか。


コルクがやっているのは、クリエイターのエージェント業になります。欧米の先進国では一般的ですが日本ではまだまだ珍しいモデルです。というのも、日本ではすでに出版流通がしっかりしていて、出版社を経由しないと本が出ないので、出版社の担当編集を見つけるというのが、作家にも出版社にも楽な方法でした。しかしいまはインターネットの力が大きい時代です。だから、時代に合わせてネットを活用し、クリエイターの人たちが活躍できるような環境を、コルクがつくります


具体的には、作品を世に出すためのサポートやファンとの接点づくり、関連グッズの販売やイベントの運営など、さまざまな事業をしています。クリエイターの人たちが世に出ることができて、創作で食べていくことができ、自分がつくりたいものに打ち込めるようにする。そのためにエージェントとしてさまざまな支援をするのが、コルクというわけです。


掲げているミッションは「物語の力で、一人一人の世界を変える」です。僕の中には、シンプルに「物語を読みたい」「自分の世界を変えてくれるような物語に出会いたい」という気持ちがあります。物語には誰かの世界を変える力がありますし、誰かの世界を変える物語を世の中にたくさん提供したいという想いがありますね。


─────「読みたいもの」とは、たとえばどういった物語なのでしょう?


僕の世界観を変えてくれるものですね。佐渡島という人間のバイアスがかかった状態で世界を見ていると、どうしても同じような景色が続いていくじゃないですか。でも、仮に同じものを見ていたとしても、人によっては見え方や見ている対象から感じ取るものは違います。


他の人が見えているもの、感じ取っている世界を、その人の物語を通じて自分の中にインストールする。インストールした「その人の目線」で世界を見てみると、これまでとは違った世界を見ることができる。これまで自分の中にあった世界が、少し変わるわけです。そういう体験をさせてくれる物語を僕は読みたいんです。


これまで担当した作品でいえば、マンガだとドラゴン桜』は僕の世界を変えてくれた一作です。小説なら平野啓一郎さんの『空白を満たしなさい』。この小説に出てくる分人主義という考え方は、僕を大きく変えてくれました。


個人的には、人生にはそこまで意味はないと考えているタイプなんです。生まれてきて、世界を見て、死んでいく。それが人生だと思っています。仮にそうだとしたら、じっくりと世界のことを見てみたいし、いろんな世界を見てみたいという願望があります。


この願望を叶えてくれるのが、本というツールです。他の人の知覚や説明を通じて自分には見えていない世界を知る。これがとても面白いし、僕にとっての人生みたいなことですね。「本を読みたい」と「世界を知りたい」はセットになっています。自分の力だけで世界を知るには限界があるので、本を読むことで他の人の目から見た世界を知る。そうすることで、世界を深く、広く知りたいんです。


─────ありがとうございます。私たちのような一般消費者にとっては、コルクがあることでどのような「世界を変える機会」があるのでしょうか。

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。