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新しい当たり前をつくるために。「良いサービスとは何か?」を問い続け、顧客満足の追求にこだわり続ける、レンティオの挑戦。

新しい当たり前をつくるために。「良いサービスとは何か?」を問い続け、顧客満足の追求にこだわり続ける、レンティオの挑戦。

サブスクリプションシェアリングエコノミーレンタルビジネス持続可能性データドリブンカスタマーファースト組織文化

2024.08.01 公開

会社概要 - company profile

企業名:レンティオ株式会社

設立:2015

事業内容:家電のレンタルサービス「レンティオ」の運営、 その他メディアサイトの運営など

推薦理由 - Reason for recommendation
中村達哉

中村達哉

グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社 プリンシパル

「ググる」「ツイートする」「メルカリする」 スタートアップが提供するサービスが「世の中の当たり前」になる証として、サービス名が動詞化する現象はこれまで多くありました。レンティオは「買う前に試す」という提案を通じ、消費者が納得して商品を利用できる世界を目指しています。 既に国内レンタル事業No.1の流通規模を築いており、近い将来「レンティオする」を当たり前に使う日も近いかもしれません。

これまでのキャリアとレンタルサービス「レンティオ」誕生の経緯

─────どのような経緯で起業に至ったのか、教えてください。


2008年、大学を卒業して楽天に入社しました。当時はECが流行っていて、おもしろそうだな」と感じたのが入社の理由です。


楽天で働いていたのは3年くらいです。楽天市場に出店しているたくさんの店舗と一緒に「売上を伸ばすにはどうすればいいか」を考えたり、ECについてもそれなりに勉強していました。いろいろと経験を積むなかで、店舗を支援するのも良いけれど、自分で商売するのもおもしろそうだなと思うようになり、ECのベンチャー企業に転職したんです。


そして、ECベンチャーで数年の経験を積んで、「自分で会社を立ち上げるタイミングかな」と思って起業にいたります。それが2015年のことですね。


─────レンタルに着目したのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?


これは会社を立ち上げる前のことですが、友人の結婚式に参加したんです。そして、結婚式の余興で、僕がある芸人さんのモノマネをすることになったんですよ。


獅子舞ってあるじゃないですか。獅子のお面のようなものをかぶって、マントみたいなものを着るやつ。モノマネをするために、あれが必要になったんです。いろいろ調べてみると、買ったら3万円くらい。でもかさばるし、結婚式が終わったらもう使わないかもしれないし、「買うのはないな」と。でもモノマネはしなくちゃいけないので、さらに調べたんです。


すると、獅子舞のレンタルを見つけました。料金は2万円くらいだったと思います。結局レンタルにして、無事に余興を終えたんですが、そのときにわかったのは「買うと3万円するものを2万円出して借りる人がいる」ということです。


それからレンタルのことに興味が出てきていろいろと調べ始めました。日本でのレンタルの歴史とか、深掘りしていくとおもしろかったですね。


ひとつ例をあげると、フンドシってあるじゃないですか。江戸時代とかの。当時、地域によっては、成人を迎えたときに初めてフンドシを締める祭事があったようで、フンドシは一張羅だったようなんですね。大事なイベントのときには良いフンドシを借りてきて、儀式に参加するみたいなことがあったんですよ。


「もしかすると日本人とレンタルって親和性があるんじゃないか?」と考えるようになりました。「もったいない」という日本人の価値観が海外で注目されたこともありますし、物を大切にする国民性にはレンタルサービスは相性が良いんじゃないかと考えるようになったんです。


それに自分の獅子舞の話じゃないですけど、普段は必要ないけど一時的に使いたいものってあるじゃないですか。そういう商品を仕入れておいて、数回レンタルに出せば元が取れて、そのあとは利益になる。「これはビジネスとして成り立つかもしれない」と思いましたね。


─────ご自身の経験や過去の歴史から、事業のタネを考えたということですね。


「レンタル」という方向性は決まったものの、「それだけで良いのか?」について考えていました。


商品を仕入れて誰かに貸して、何回もくり返して差分で儲ける。これだけだと僕は何も価値を生んでいないんですよね。「せっかく自分でビジネスをやるのに価値を生んでないのはイヤだな」という気持ちがありました。


そこでまた考えた結果、レンタルに加えて「試してもらう」という要素を付け加えたらどうだろうというアイデアにいたりました。


買ったら5万円する商品があるとして、「欲しいけどどうしようかな」と迷っている人にレンタルで一度試してもらう。試してもらった結果、本当に満足すれば購入してもらう。仮に気に入らなかったら、レンタルのみで、購入しない。そういう仕組みはつくれないだろうか。


当時、たとえば家電量販店とかは競争がとても激しかった。他のお店より1円でも安くします!みたいな。買う側も同じで、とにかく価格にフォーカスが当たっていました。ただ、価格競争って利益を削り合うわけだから売る側は本当にしんどいんですよね。できればやりたくない。買う側も、安く買えたかもしれないけどその商品に満足するかはわからないわけです。実際には使っていないわけなので。


だから、売る側と買う側の間に入って、お互いをうまくつなぐ仕組みをつくることができれば、それは価値を提供していることになると考えました。それで、カメラや家電のレンタルやお試しができるサービスで起業することにしたんです。



サービス成長のきっかけと、成長の原動力になったもの

─────創業事業であるRentioについて聞かせてください。


Rentio(レンティオ)はカメラや家電のサブスク・レンタルサービスです。「イベントがあるのでその日だけカメラを借りたい」とか、そういうニーズに対応しています。そして、試しにレンタルして使ってみて、気に入ったら購入できる機能もとても多く利用されていますが、最初は普通のレンタルがほとんどでした。


人気があったのはカメラのレンタルです。当時は店舗でのレンタルサービスが付加的にあるだけで、ネットのレンタルサービスが少なく、検索されたときの対策をちゃんとやっていない会社が多かった印象でした。だから僕たちは最初からSEO対策をしっかりやりました。当時まだ創業して1ヶ月くらいだったと思うのですが、「チェキ レンタル」で検索するとRentioが1位か2位に表示されていました。


─────Rentioが飛躍するきっかけは何だったのでしょうか?


コロナは大きな節目だったと思います。外出する機会が減り、カメラのレンタル需要はガクンと下がりました。みんなが外出を控えたし、人が集まるイベントが開催されないので、当然ですよね。代わりに、キッチン家電や美容家電のお試しレンタル需要が大きく伸びたんです。


キッチン家電や美容家電というのは、長く使うものだし、自分に合うものが欲しいじゃないですか。そのため、「まずは一回試してみてから」というニーズが強いんです。


メーカーが僕たちを見る目も少し変わってきましたね。お試しレンタルはメーカーから在庫をお預かりする仕組みです。もともとメーカーへの営業はがんばっていたものの、コロナ前はあまり良いリアクションはもらえませんでした。ただ、コロナになって百貨店や量販店といった店舗に人が来なくなった。そこで、消費者との接点を持つために、メーカーから僕たちに声をかけてくれるようになってきたんです。


お試しレンタルが大きく伸びた中で改めてわかったことは、ユーザーにとってもメーカーにとってもメリットがあるということです。


わかりやすい例として、お掃除ロボットがあります。この商品は、ある程度の広さがある家だと非常に効果的ですが、狭い家で使うと思ったほど便利じゃないんですよ。それを知らずに買ってしまうと、「期待していたのに!高かったのに!」と不満になるわけです。そして、その不満がネガティブな口コミになったりする。メーカーからすれば、商品のブランド的にマイナスですよね。でも、お試しレンタルをすればこれらを回避できるんです。


2015年からスタートしたRentioですが、いまでは月間で14万人以上のユーザーがサービスを使ってくれるようになりました。Rentio内の取扱高も順調に成長しています。


─────サービスが成長すると競合が出てくると思いますが、競争優位性についても聞かせてください。


これは顧客満足度が高いことですね。僕たちの顧客は大きく分類すると「商品をレンタルしたいユーザー」と「商品を使って欲しいメーカー」の二種類です。


ユーザーに関しては、NPSのスコアをモニタリングしながら、より良いサービスづくりを続けてきました。「問い合わせの対応が早い、丁寧である」ということや「商品がキレイに届いた」という基本的な部分は本当に大切にしていて、NPSスコアはプラス30くらいです。


ユーザーの満足度が高いので、たくさんのメーカーが安心して商品を預けてくれます。ユーザーがレンタルサービスを利用する際のプランがたくさんあるのですが、それがメーカーの満足度を高めるためにプラスに働いているんだと思います。


具体的には、Rentioでは新商品も中古品もレンタルが可能です。月額のサブスクで商品を借り続けることもできますし、一回だけのスポットで借りることもできます。そのため、それぞれの商品がどういう借り方をされているのかデータが残るんです。また、使ってみての感想はもちろん、お試しで終わったのか、その後購入に至ったのかもわかります。


このようなデータを蓄積して分析し、レポートとしてアウトプットする仕組みもあります。だから僕たちは、メーカーにとってただの卸先ではなく、マーケティングパートナーとして見てもらえるんです。メーカーとの連携が強いのは大きな強みですね。


─────ユーザー満足度が高いのはなぜだと考えていますか?


「良いサービスとは何か?良いサービスをつくるにはどうすればいいか?」を軸に仕事をしているからでしょうか。

会社のミッションとかビジョンとかはあまり言わないのですが、掲げている行動指針については結構口にするんです。僕たちの行動指針は「カスタマーファースト」「本質的価値の追求」「仲間への敬意」の3つ。良いサービスをつくるにはこれらが大切だと考えていて、社内のみんなも同じ価値観で仕事をしてくれています。


一つ例を出すと、カスタマーサポートとエンジニアとのやり取りがあります。「お客様からこのサービス説明がわかりにくいという声があがってきました。サイト内のこの部分で改修が必要じゃないかと思うのですがいかがでしょうか?」という意見が、入社2年目の20代のカスタマーサポートから社内チャットにポストされたりします。それに対して「確かにそうですね。軽微なプログラム修正で実現できそうなのですぐにやってみます」と40代のエンジニアチームのリーダーが返信し、すぐに改修する。


エンジニアの仕事には、技術を深めていくやり甲斐とか、新しい技術に触れる楽しさとかがあると思います。ただ、ウチのエンジニアは技術を使うことで自分たちのサービスをどこまで良くできるのかに挑戦している感じなんです。根っこに「良いサービスをつくりたい」があって、それを実現するための手段として技術があるというか。だから、カスタマーサポートの意見をきちんと聞く。おかげでカスタマーサポートも意見を言いやすい。結果的に小さな機能改修とか含めて少しずつサービスが良くなっていって、それがユーザー満足度に返ってきているのだと思います。


ちなみに、2022年にローンチしたRentio GOはユーザーの声から生まれたサービスなんですよ。


─────現場の声から新サービスが生まれたんですね。ちょっと詳しく聞かせてください。


扱っている商品の中に防振の双眼鏡があるんですが、東京ドームみたいな大きなところでライブがあると結構な注文が入るんです。レビューを見ると「3階席だったけどこの双眼鏡のおかげでバッチリ見えました」とか書いてあるんですよ。いわゆる”推し”を見るのに双眼鏡が役立ったということなんですが、とにかく真剣で熱量が高くて。


社内にも推し活をしている社員がいるんですが、熱量の高いユーザーのことを知っていて「もう少しレンタル代が安ければ良いのに、という声も多いんですよ」と教えてくれたんです。そこでレンタル代を下げることができないかを検討することになりました。


双眼鏡のレンタルは5,000円とかなんですけど、バカにならないじゃないですか。好きなアイドルのライブに行く時って、地方からだとチケット代に交通費、グッズ代にホテル代と結構な出費です。そこに双眼鏡のレンタル代が乗っかるとキツイわけですよね。


なので、店舗をつくったんです。無人の店舗で、中にロッカーを置いて、双眼鏡を入れておく。申し込んだユーザーは、ライブの前に店舗に双眼鏡を取りに行ってもらって、使い終わったら店舗に返してもらう。その際に、レンズを拭いたり簡単なメンテナンスをしてもらう。


そうすることで配送の手間とかメンテナンスにかけていた人件費を削れるので、レンタル代を3,000円くらいにできるんです。このアイデアから誕生したのがRentio GOというシステムなんですよ。


今は水道橋と横浜に店舗を出しています。店舗の場所代等がかかりますが、ライブがある度に1日で100件以上の申し込みがあるのでサービスとしてはちゃんと利益が出ています。店舗には感想を書いていただくノートを置いていますが、「楽しめました!」とか「⚪︎⚪︎君と目が合った!」など気持ちのこもったコメントばかりで僕らもうれしいですね。



買う前に試す。新しい消費行動を世の中に広めていくために

─────2024年にローンチされた新サービス、Rentifyについても聞かせてください。


Rentifyは、社内に蓄積してきたレンタルやサブスクのノウハウを法人向けに提供するサービスです。自前で仕組みをつくり、ユーザー対応や商品の配送までやろうとすると大きなコストがかかるのですが、このサービスを使えばミニマムプランだと数百万円とかゼロに近いコストで対応可能になります。


ある意味、僕たちのノウハウを提供して、自分たちで競合をつくっているようなものなので、ビジネス的な視点だとなぜ?と思われるかもしれません。ただ、「買う前にレンタルで試してみる」といった新しい価値観を世の中に広めていくためには、僕たちだけではまだまだ影響度が小さいという課題がありました。Rentifyを通じてレンタルサービスを提供する事業者が増えれば、結果としてレンタルやサブスクという考え方が早く世の中に広まる。その方が、良い世界観がつくれるんじゃないかと考え、決断したんです。


─────「良い世界観」とは具体的にどのようなものでしょうか?


世の中からいろんなムダが減る。そういう世界観です。試しに使ってみて、納得できてから商品を買うようになれば、ユーザー側はムダな買い物が減りますよね。経済的なマイナスも減るし、ゴミも減るかもしれません。メーカー側だって「必要とされているものを必要なだけつくる」になっていくと思うんです。大量生産、大量消費、大量廃棄というこれまでの当たり前が、少しずつ変わっていくんじゃないか。それって世の中にとって良いことじゃないかと思うんですよね。


もちろん当たり前を変えることは簡単じゃないです。だからこそ、普通ならやらないことをやっていく必要があると思います。自分たちで競合をつくるようなRentifyのローンチも、その一つかもしれません。


Rentifyを使ってくれる法人にはレンタルビジネスを始めるための仕組みは公開しますが、満足度の高いサービスを提供するには僕たちのノウハウが必要になります。ぜひ僕たちを頼っていただきたいですし、Rentifyを入り口にしていろんな企業と協業を進めていきたいと考えています。


本日のゲスト

企業名:レンティオ株式会社

事業内容:家電のレンタルサービス「レンティオ」の運営、 その他メディアサイトの運営など

コーポレートサイト:https://www.rentio.co.jp/

インタビューを終えて
水野 歩

水野 歩

株式会社ディプコア 代表取締役CEO

個人的な経験なのですが、とあるECサイトで購入したものが数回使っただけで壊れ、あまりに書かれている内容と異なったため、他の方に同じ思いをしてほしくなく、初めて口コミを書きました。すると販売会社からメールが届き、「良い口コミに書き換えてくれたら1,000円のクーポンを差し上げます」と書かれていました。この商品は1,000円程度だったので、書き直す方もいらっしゃるのではと思いました。 Rentioのサービスは、使ってみて本当に良いものだけが売れ、世の中に残る世界観を作ることに一役買っていると思います。ものづくりをしているメーカーも、本当に使ってもらえるものの製造に力を注ぐことができる。買った本人も、後悔せず長く愛用することができる。いわゆる、悪貨が良貨を駆逐するのではなく、本当に良いものが世の中に残る世界になれば素晴らしいなと素直に思いました。

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。

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