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日本の生産性を向上させるために、誰もが活躍できる仕組みをつくる。SalesNow粂が描く、ミッション達成までのシナリオ。

日本の生産性を向上させるために、誰もが活躍できる仕組みをつくる。SalesNow粂が描く、ミッション達成までのシナリオ。

SaaSセールステック営業効率化労働生産性向上働き方改革LLMCOOデータドリブン

2024.08.09 公開

会社概要 - company profile

企業名:株式会社SalesNow

設立:2019

事業内容:営業活動を支援する企業データベース「SalesNow」の提供

推薦理由 - Reason for recommendation
渡邉佑規

渡邉佑規

KUSABI 代表パートナー

勝者不在、圧倒的な成長余地があるものの、様々なプレーヤーの参入が相次ぐSales Tech領域において、DB×SaaSというアプローチで台風の目(Sales Tech領域の一丁目一番地)になることが期待されるスタートアップ。良い意味で、営業ドリブンではなく、プロダクト・テックドリブンな思想を持った経営スタイルです。創業者を筆頭にチームは若く、真っ白なキャンバスに近い、伸びシロだらけな状態。これまで意図して、筋肉質に事業と組織の磨き込みをしてきました。今後の飛躍的な成長が期待されます。

これまでのキャリアと創業の経緯

─────これまでのキャリアについて教えてください。


神戸大学を卒業して、新卒でレバレジーズという会社に就職しました。代表の村岡は会社の同期で、彼が法人営業配属、僕がマーケティング配属でした。同じ新規事業の立ち上げをやっていて、2年半くらい一緒に仕事をしていました。


当時の営業は、気合・根性・マンパワーでがんばるというもので、Web上にある企業情報を拾ってきて、スプレッドシートに100件くらい貼り付けて、上から架電してアポイントがもらえたら商談に行くというスタイルでした。


代表とも「これって効率悪いよね」という話をしていました。だから彼と一緒に業務効率化に取り組んだんです。Pythonを使ってスクレイピングしたり、リスト作成を自動化したり、簡易のデータベースをつくって少しずつ営業の業務改善をしていきました。


代表が僕たちがつくった仕組みを取引先に見せたら「売って欲しい」と言われて、「これは事業になるかもしれない」と思ったのが創業の背景ですね。


─────二人でつくったサービスだったんですね。


代表とは週3のペースで飲みに行っていたんですが、いつも新規事業をどう伸ばしていくかという話題で盛り上がっていました。あるとき、彼が「こんなサービスサイトをつくってみたんだけど、どう思う?」と持ってきたことがあったんです。


お前がつくったの?営業なのに?」と驚きました(笑)。同時に、彼にできるんだったら自分にもできるかもしれないと考え、仕事が終わってからとか週末の時間を使って一緒につくっていったんです。


プロトタイプは、エクセルに100万件の企業情報がバーっと並んでいたのと、一枚のLPだったと思います。それができあがってから、自由にダウンロードできた方が良いよね」「検索できないと不便だよねという感じで、ふたりで勉強しながらサイトをつくり込んでいきました。そして、2019年8月に創業したんです。



考えていたのは、「いかに強いデータをつくるか」

─────創業から「SalesNow」のローンチまでを聞かせてください。


代表と一緒に描いたミッションは「誰もが活躍できる仕組みをつくる。」というものです。僕の役割は、ミッションを達成するための計画を立て、それを実行することになります。


データ技術を活用した仕組みで、営業現場の生産性を向上させるという大目的はありましたが、それだけに集中できたわけではありません。プロダクトをもっともっと磨く必要がありましたし、会社を立ち上げたばかりでキャッシュも十分ではありませんでした。


そこで、最初は営業リストの作成代行などをしていました。営業の生産性をあげたいというニーズがある企業から発注をもらって、営業リストをつくるという仕事でした。そして、会社を立ち上げてすぐに100万円くらいの受注が決まりました。


他にも、営業活動の一部を自動化する「AI営業」みたいなサービスをつくったりしていました。SNS広告を出したんですが、それまでは1日で数件だった問い合わせが、急に100件とか200件とか来るようになりました。


いずれも「もっと効率的に営業したい」というニーズがある証拠で、自分たちが目指す方向性は間違っていないとわかりましたね。そこで、単発の営業リスト作成といったBPO事業のようなことを続けつつ、自分たちのプロダクトをつくり込んでいきました。つくり込む中で、他のSaaSサービスとの競争に勝つためにも、高品質・高単価の企業データベースが必要だという考えに落ち着き、2022年8月に「SalesNow」をローンチしたんです。


─────他のサービスとは、どのように差別化しようと考えたのでしょうか?


いかに強いデータをつくれるか」ということだけを考えていました。強いデータというのは良いデータに言い換えられるかもしれません。やはりユーザーからすれば、自分たちのニーズに沿ったサービスじゃないと意味がないと思うんです。営業現場で使い続けてもらうには、データの品質が良いことが重要で、そのためにも強いデータをつくるにはどうすれば良いかを考えていました


データ品質の良し悪しは、大きく3つの観点があると思っています。まずは、データの量が豊富であること。そしてデータの正確性が担保されていること。最後に、データの更新頻度が高いことです。これらを追求し続けるにはどうすればいいかを考え、実装することで、他とは違う高品質な企業データが提供できると考えました。


─────3つの観点をカバーするための具体的な取り組みを教えてください。


まず、最初のデータ基盤設計にはかなり力を入れました。考えていたのは、企業に関連するあらゆる情報を集め、特定のキーで企業に紐づける。それを時系列で追加し続けていくというものです。そのときはもちろん、過去の情報も保有していることに価値があると考えていたので、長期的に企業の情報がどんどん追加されていくことを前提にプロダクトのデータ基盤をつくっていきました。


データ基盤が設計できれば、そこに大量の情報を集めてきて、整理すれば良いわけです。言葉で説明すれば簡単ですが、実際はなかなか難易度が高い。そこで僕たちは質の高い強いデータをつくるための組織づくりを進めました。


社内の組織は大きくビジネス側とプロダクト側に分かれるのですが、プロダクト側の半分がデータに関わるデータチームになります。「データエンジニア」「データアナリスト」「データサイエンティスト」「データストラテジスト」「データリサーチャー」と5つの階層で構成されています。データを収集し、データの解析を行ない、どの企業と紐づけるかを決める、という具合に役割分担しています。


これらの仕組みがあるので、大量で正確なデータが頻度高く更新されるプロダクトになりました。毎日100万件以上のデータソースから情報を収集し、法人番号をユニークキーにして230万件の情報が更新されています。現時点の総データ量は32テラバイト。件数で言えば80億件以上のデータを保有するまでになりました。


─────80億件はちょっと想像できないですね、、、。プロダクトづくりのこだわりについてもお聞きしたいです。


こだわっているのは、可能な限り自分たちでデータを集めることです。保有するデータ量が多いことが品質を高めるための条件のひとつとお伝えしましたが、量を増やすためなら他社からデータ提供を受けることもできるわけです。ただし、僕たちはその選択肢は極力取りません。


というのも、たとえば従業員数とかだと数値ではなくレンジの提供になったりするんですよ。従業員6名の会社があったとして、レンジだと「0〜10名」という感じです。「6名」と「0〜10名」だとデータの粒感が異なってしまい、活用しにくくなってしまう。粒感がバラバラな情報をたくさん持っていたとしても、データとしての価値は低くなってしまいます。であれば、自分たちでデータを集め、活用しやすい状態で整理・管理し、強いデータに磨き上げていく方が良いと考えています。


あとは、時系列で情報をつなぐことでしょうか。その瞬間の情報を持っていることにも価値がありますが、推移で情報を持っていることはさらに大きな価値があると考えているからです。従業員数で言えば、直近で急に人数が増えている場合は、何かしらの投資が行なわれていると想定できます。逆に、従業員数が減り続けている場合は、その企業の信用力が下がっていることがわかります。情報を推移で持っていることで、過去のファクトから未来を想定できるからです。


─────強いデータは“営業の生産性向上”というテーマにどのように効いてくるのでしょうか?


膨大な企業情報があり、最新のニュースがどんどん追加され、ほぼリアルタイムで情報更新されるという土台があり、そこにLLMやAIの技術を活用することで、どういう企業にどのようなニーズがありそうかをSalesNowが提案してくれるようになります。


すでにデータチームで取り組みを開始していますが、LLMは適切に整理された大量のデータを学習させることで、その強みを発揮します。どういう企業が営業対象になるかといったリストアップはもちろん、なぜこのタイミングでこの企業に提案した方がいいか」までを示唆する情報を生成してくれます。そうすることで、商談よりも手前にある作業をショートカットでき、商談や提案といった営業本来の業務に専念できるようになります。営業活動に使える時間も増えますし、営業の生産性向上につながると考えています。


─────データチームの皆さんは、なぜSalesNowを選んだのだと思いますか?


データ基盤が整っていて、膨大なデータがあることが魅力になっているのではないでしょうか。データを集めるところからではなく、すでに保有している多くのデータを分析するところからできるというのが大きいのだと思います。


あとは、代表と僕は営業とマーケティング出身なので、「営業現場がどういう情報を欲しているか」というユーザー側の視点を持っていること。それに、僕たちが事業会社であり、ユーザーのことをリアルにイメージできるというのも魅力なのだと思います。ただ大量のデータがあり、それをどのように分析しようか?ではなく、分析した結果どのような価値が提供できるか、自分のがんばりが誰のどのような体験につながるかがわかるというのはポイントだと思いますね。


また、データやユーザーを大切にしているという会社のカルチャーがあるので、仕事がしやすいのかもしれません。代表も僕も、データ技術に対して理解があり、データについての議論や意見交換もできます。ビジネス側とプロダクト側の距離が近く、週に3回は定例の会議体があって、ポジティブもネガティブも合わせて「こういう意見が出ていますよ」とユーザー側の意見がすぐにプロダクト側に届きますから。


─────技術者とユーザーが近いというのは良いですね。


社内ではユーザーの理解を深める」とか「ユーザーの解像度を高める」という言葉を使ったりしていますが、ユーザーに関しては非常に関心が高いと思います。


たとえば、営業の商談録画をプロダクト側で見るという動きがあります。新しく追加した機能についての感想とか、「こういう理由でこういう機能があるとうれしい」というユーザーの声を、商談録画からインプットしようという取り組みです。


あとは、みんな展示会が好きです。展示会に出展するときは、エンジニアもデザイナーも「行きたい!」と言います。お祭りみたいな感じで(笑)。ブースに来てくださった方に自分たちのサービスを直接アピールしたり説明したりすることで、ユーザーの生声に触れられるのが刺激的なようで、そういったカルチャーがとても好きです。


企業データベース領域における「圧倒的な一強」を目指す

─────今後、どのような成長戦略を描いていますか?


まずは企業データベースを活用することによる営業職の生産性向上を実現したいです。営業職はシンプルに従事者が多い職種であること。そして、営業職は売上につながる直接部門であり、同時に気合と根性といった前時代的なやり方や属人性が多く残っていると考えています。つまり、市場も改善インパクトも大きいので、営業職の業務改善が進めば日本全体の生産性にもプラスの影響が与えられると考えているからです。


─────そのために、どのようなプロセスを考えているのでしょう?


エンタープライズセールスを重点的に進めていきます。理由は、対象顧客の組織が大きいので、ある営業部で効果が出せればそこから他の部署に展開しやすいことが挙げられます。一社に導入すれば、結果的に数百人とか数千人の方に使ってもらえるため、改善インパクトが大きいんです。


日本のソフトウェア投資の80%は0.3%のエンタープライズ企業が占めている、という調査があります。これが正しければ、エンタープライズ企業に注力することで、全体的な生産性向上につながるという想定です。ただもちろん、日本企業の大多数を占める中小企業へもしっかりと提案をしていきます。


─────大手企業になるとSFAで顧客情報を管理しているところがほとんどですが、どのように提案していくのでしょうか?


顧客が保有している情報とSalesNowのデータがしっかり連携するように、高い名寄せ率を実現しています。


たとえば、顧客のSFAにある3万件の企業情報に対して、通常の企業データベースであれば業界とか従業員数とかの情報を1万件しか付与できないとすると、僕たちのプロダクトでは2万件以上付与できるという感じです。


名寄せできるかできないかはデータ連携する際の課題のひとつですが、突き詰めて考えていくとデータとロジックの話だと捉えています。SFAの中にある情報とSalesNowが保有している膨大な情報をどのように突き合わせるか、突き合わせた結果を踏まえて連携する・しないの条件設定をどうするか。これらを丁寧に設計していくことで、高い確率での名寄せが実現します。


企業データベースとの連携を検討している、もしくはもっと良いものへの乗り換えを検討しているというお客様には、先に僕たちの手の内をお見せしています。お持ちの企業情報とどれだけ連携するか事前に確認いただき、その上でご判断ください。僕たちは自信がありますので」というスタンスです。このやり方で結構導入いただいていますね。


お客様は、持っていても使えないと意味がないことをわかっていますし、効果が期待できるものに投資したいわけです。そういった顧客ニーズから逆算し、どのようなセールスポイントがあれば認めていただけるかを考え、プロダクトに落とし込んでいます。


─────なるほど。代表やご自身のユーザーとしての視点が活きているわけですね。会社の現状や今後についても聞かせていただけますか。


会社の現状で言えば、成長を続けているので毎日が本当に楽しいです。どんな価値を提供できるか、ユーザーの期待に応えるにはどうすればいいか、もっと強いデータをつくるには、もっと良い組織にするには・・・という感じでいろんなことをグルグルと考え続けています。寝てるとき以外はずっと考えているのですが、それが本当に楽しいです。


考えて、達成するためのプランをつくって、実行する。このサイクルを回せば回すほど、僕たちはもっと先に進める。先に進むために必要なカルチャーも、チームも、実績も、自信もあるので、とてもポジティブな状態で仕事ができていると思っています。


今後については、企業データベースの領域で一強になりたいと考えています。競合と市場を分け合うのではなく、圧倒的な一強になりたいですね。良いデータ、強いデータを活用することで業務改善ができることは見えているので、僕たちが一強になれれば、もっとたくさんの方に僕たちのプロダクトを使ってもらえると思うんです。そうすることで、世の中の生産性向上に貢献していけると考えています。


また、企業データベースという基盤があれば他の領域にも広げていけると考えています。今は営業職をメインにしていますが、売上や従業員数の推移から企業の信用調査にも使えますし、マーケティングにも使えます。M&AやVC向けのリスト作成にも活用できます。拡張性が大きいので、今後どういう進化ができるのかとても楽しみです。


これらはすべて強いデータがあり、良いプロダクトがあって初めて実現します。データの質を妥協せず、高い志を持ち続けていきたいですし、「企業データならSalesNowだよね」と言われるようになりたいですね。そしてゆくゆくは、「日本の生産性って高いよね」と世界中から言ってもらえる状態をつくることができたら最高だと思っています。


本日のゲスト

企業名:株式会社SalesNow

事業内容:営業活動を支援する企業データベース「SalesNow」の提供

コーポレートサイト:https://salesnow.jp/

インタビューを終えて
水野 歩

水野 歩

株式会社ディプコア 代表取締役CEO

取材では村岡社長にもインタビューをしたのですが、「代表である僕がビジョンを掲げ、粂がそれをカタチにするための計画を立て、実行するんです」とお互いの役割分担について話してくださいました。 エンタープライズ企業への提案に注力している同社ですが、現場の声を大切にするために粂さんが積極的に顧客との面談に入っているそうです。粂さんご自身も「使えるサービスじゃないと意味がないので、導入してもらえるかよりも、価値提供できているかが大事」とおっしゃっていましたが、ユーザーのことを第一に考え、価値提供に思い切りこだわるという同社のカルチャーを体現されていると感じました。 生産性の向上は、今後の社会においても大きな、そして重要なテーマのひとつだと思います。データの力で課題解決に挑戦する同社に、これからも注目していきたいと思います。

※本記事の内容はすべてインタビュー当時のものであり、現在とは異なる場合があります。 予めご了承ください。

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