
データ技術の知見を携え、プロダクトドリブンな組織 を率いるSalesNow村岡の、日本の未来のために僕たちがやるべきこと。
2024.08.01 公開

2024.08.01 公開
企業名:株式会社SalesNow
設立:2019年
事業内容:営業活動を支援する企業データベース「SalesNow」の提供

KUSABI 代表パートナー
勝者不在、圧倒的な成長余地があるものの、様々なプレーヤーの参入が相次ぐSales Tech領域において、DB×SaaSというアプローチで台風の目(Sales Tech領域の一丁目一番地)になることが期待されるスタートアップ。良い意味で、営業ドリブンではなく、プロダクト・テックドリブンな思想を持った経営スタイルです。創業者を筆頭にチームは若く、真っ白なキャンバスに近い、伸びシロだらけな状態。これまで意図して、筋肉質に事業と組織の磨き込みをしてきました。今後の飛躍的な成長が期待されます。
大阪府立大学工学部を卒業して、新卒で法人営業として就職しました。
学生時代は環境データ分析の研究をしていました。大気汚染物質の濃度を測定して、データを分析し、どのような影響があるのかを調べるというものです。当時からPythonやSQLなどに触れていたので、データ技術の知見を持った上で社会に出ました。これは現在のビジネスモデルにも大きく影響しています。

新卒で入社したのはレバレジーズという会社です。新卒人材紹介の法人営業一期生としてキャリアをスタートしました。
当時はまだ前時代的な営業スタイルで、ひたすら電話営業して、商談のアポイントを取るという日々でした。毎日100件くらい電話するのが当たり前で、そのうち商談につながるのは1件くらいの世界でした。目標は達成しても、とにかく商談までの打率が悪かった。そして達成するために、連絡をする企業のリストアップなど、商談より手前のことにほとんどの時間を使っていたので、当時から「もっと効率化できないか」と課題に感じていました。
レバレジーズで2年目を迎えると、リーダーに昇格してチームを任されました。新卒社員が僕のチームに配属されたんですが、そのうちの一人が長時間労働で体調を崩してしまい、退職してし まったんです。彼女は100件電話するのに8時間を使い、業務時間終了後に翌日の架電リストをつくったり、お客様のフォローをしたりしていました。目標達成するには長時間労働が前提になっていたんです。
営業の仕事は、お客様とコミュニケーションを重ね、悩みごとや要望をヒアリングし、お客様の課題解決をすること。しかし、それ以外の業務が多すぎて、使える時間がどんどん削られてしまった。結果として、大事なファーストキャリアなのに彼女は一年で退職することになってしまいました。これを目の当たりにしたときに、「このままじゃダメだ」と強く思ったんです。
そこから自分でデータベースをつくり始めました。営業活動を効率化させるためのもので、PythonやSQLを使ってWeb上にある企業情報を集めてくる仕組みをつくったんです。業種や企業規模など、ターゲットごとにスクリーニングできるようにしたり、事業部全体で営業に使えるように手を加えていきました。

結果、このデータベースを使って500商談くらいが獲得できて、そこから新規の受注が入るようになりました。なかには億単位の取引に繋がったものもあったと思います。僕の事業部では、時間的にも精神的にも少しずつ余裕が持てるようになってきて、お客様とのやり取りにしっかり時間を使えるようになり、それが業績にもつながるようになっ たんです。
他の事業部からも、「同じようなデータベースをつくって欲しい」とか「営業効率を高めるために相談に乗って欲しい」と声をかけられるようになりました。知人が勤める人材ベンチャーからは「データをつくってもらえないか」と依頼が来たり、データを活用した営業支援サービスをやっているスタートアップの社長から「ウチで働きませんか」とヘッドハンティングを受けたり、結構な反響がありました。営業のアナログな働き方に課題を感じている人は多く、困っている人がたくさんいるということが改めてわかりました。
そこで、レバレジーズの仕事をしながら、夜間や土日にデータベースを使った営業効率化の仕組みづくりを進めていったんです。営業組織のマネージャーの仕事も楽しくて、やりがいを感じていました。ただ、身体はひとつしかないので、どちらかに絞らないとダメだと考え、退職することにしたんです。
僕が退職することで、事業部の売上は下がるかもしれない。でも、おそらく一過性のもので、いずれ持ち直すだろう。少なくとも、僕の退職がきっかけで事業部がなくなるということはない。
一方で、いま進めているデータを活用した営業活動の改善は、僕がやらないと止まってしまう。働き方が改善される人がいるかもしれないのに。であれば、僕じゃないとできないことを選び、そこにすべての時間を使おう。そう決めました。

COOの粂は会社の同期で、週に3回は飲みに行く仲でした。飲みに行ってもずっと仕事の話をしていたんですが、そこで僕が考えていることを話したらめちゃくちゃ興味を持ってくれたんです。その流れで「一緒にやろうよ」と僕から切り出しました。彼を巻き込めたのは個人的にとても大きかったですね。そして、2019年8月にふたりで創業したんです。
僕の役割は、目標を掲げることです。それも、できるだけ大きな目標を掲げます。無理そうなことでも、まずは一歩目を出せるタイプなので。粂は、掲げた目標をどうやって達成するかを考える役割です。彼は、目的達成までの道筋を戦略的かつ現実的な計画に落とし込むのが得意なんです。加えて、実行力が高い。アウトプットのスピードが早くクオリティが高いので、僕が描いた絵をしっかりと仕上げてくれま す。
職務領域で言うと、ファイナンスや採用、広報は僕がやっていて、ビジネスサイドは粂の担当になります。それ以外は、その時々で動ける方が担当しているという感じです。
役割分担や責任範囲を明確にすることが大切なのは理解していますが、きっちりと線を引くことは僕らにとってはあまり重要ではないと考えています。いつもいろんなテーマで意見交換をしていますし、週に3回の頻度で1on1をやっているので、意思決定が大きくずれることもありません。

自社プロダクトがあって、僕がオウンドメディアのオーナーで、粂がSaaSのオーナーです。プロダクトのリリースは2022年8月になります。
オウンドメディアは「SalesNow DB」というもので、日本中の500万社の企業情報が閲覧できるデータベースです。BtoBの営業に必要な情報が掲載されていて、リリースから約2年で無料版の会員数は300万人を超えました。
世の中に公開されている企業の情報を、正確に、網羅的に、そしてタイムリーに収集することができます。これを人の手を介さずに、テクノロジーのみで自動で行えます。
日々新しいニュースが出てきますから、企業情報をすばやく収集し、データベースを最新の情報に更新することはサービスの生命線と言えるくらい非常に重要です。一方で、技術的なハードルがとても高い。情報の収集やデータの更新を手動で行なっている企業がありますが、そのために1,000人規模の組織をつくっていたと聞いたことがあります。
手動で行なうとどうしても原価がかかってしまい、経営的にはしんどくなります。原価が乗っかるためサービス提供価格が高くなってしまい、ユーザーにとって手を出しにくくなってしまう。そこを私たちは、すべて自動化した。ここがひとつの特徴だと思います。
僕も粂も、データ技術に関するバックグラウンドがあったからだと考えています。データ技術に対して理解があり、テクノロジーの活用でいろんなことができることも知っている。そのため、強いデータ技術組織をつくることができ、良いプロダクトをつくることに重心をかけられているのだと思います。
国内有数ユニコーン企業の元CTOに技術顧問として参画いただくなど、データ技術のプロフェッショナルを巻き込んでいますし、人件費の70%はプロ ダクト側に投資しています。良いサービスを提供するためにも、プロダクトドリブンの考え方が根底にあるんです。

強いデータ技術組織があること。そして独自のデータソースを確保していること。これらによって独自性の高いデータベースを構築でき、大きな競合優位になっていると思いますね。
サービスやプロダクトに対する考え方が根本的に異なると思っています。
セールステックのサービスは、トップセールスの方がご自身の営業ノウハウをサービスに落とし込むことが多い印象があります。営業の効率化をサポートするプロダクトと言うより、セールスマーケティング関連のノウハウを言語化し、可視化したものというか。
ソフトウェアだけではなく、データベースも構築しなければ営業現場の効率化や生産性向上を実現するのは難しいと考えています。ただし、取り扱うデータが増えれば増えるほど、メンテナンスや情報更新のコストは高くなりますし、実行するための技術的なハードルも上がります。そのため、やはりテクノロジーの力でどうにかしないと事業としては厳しいというのが僕の考えです。そのため、トップセールスのバックグラウンドを持った方が、テクノロジーとのバランスを見ながら事業をスケールさせるのはなかなか難しいと思いますね。
僕たちのプロダクトはLLMやAIをどんどん活用しているので、データベースを構築する際の原価構造がそもそも異なります。扱うデータ量が増えても、大量のデータの中から特定の企業に紐づく情報をピックアップし、その企業の情報を更新したり、肉付けすることが可能です。企業の概要文も自動で生成できますし、今後データ量が増えていってもデジタルなオペレーションで対応が可能です。

現場の営業の方が求めているのは、その人の状況や目的にあった営業支援サービスのはずです。僕たちのプロダクトは、そういった現場のニーズを踏まえて開発されているので他のサービスと比較しても十分に戦えるものだと思っています。
僕たちが大切にしているのは、まず最初に良いプロダクトをつくること。その次に、世の中に広めていくこと。この順番です。営業力でがんばって広めていくのではなく、最初に良いプロダクトありきなんです。
事実、オウンドメディアはすでに300万人が利用するサービスになっていますし、有料版もパーソルさんやJCBさん、クラウドワークスさんといった大手企業が導入してくれています。導入に際しては「生産性が上がるのであれば一番良いものを使いたい」と言ってくださっていて、そういう目線のお客様に選ばれているのは自分たちの戦略が間違っていなかったという自信になりますし、アピールしたいところですね。
いまイメージしているのは、営業が出社してパソコンを開き、「SalesNow」にアクセスする。そうすれば、今日何をすれば成果につながるかが一覧で出てくる。そんな状態をつくりたいと考えています。
あらゆる情報を拾ってきて、テクノロジーで処理し、「どの企業に、どういう理由で、なぜ今日アプローチした方がいいのか」がアウトプットされる。情報を分析してLLMやAIが情報を生成し、示唆を与えてくれる。営業の方はその情報を参考に企業にアプローチできるようになる。市場の分析やターゲットリストの作成、アプローチトークの検討など、これまでやっていた作業はすべて「SalesNow」がやってくれる。代わりに営業の方は商談に注力できる。そんな未来をつくりたいと考えていますし、「どういう企業にどういう提案をすればヒットしやすいか」をマクロな情報から分析・想定し、アウトプットできるようにするための開発をすでに進めています。

僕たちは「誰もが活躍できる仕組みをつくる。」をミッションに掲げていますが、まずは営業の領域においてこの実現を目指しています。
というのも、日本の生産年齢人口は減少を続けていて、2050年までに現在の3分の2になると言われています。単純計算で、ひとり当たりの生産性が1.5倍にならなければ、国がじわじわと衰退していくわけです。そう考えたときに、職種別の人口が一番多いのは営業職であり、かつ売上をあげる直接部門ですから、ここにアプローチするのが全体の生産性を高めるために効果的です。加えて、100件架電して商談のアポが取れるのは1件だけといった営業手法の会社はまだまだたくさんあると考えています。つまり、改善インパクトが大きい。そのため、まずは営業の領域で誰もが活躍できる仕組みをつくろうと考えています。
もちろんです。マーケティングや経営企画など、ビジネスサイド全般に広げていくつもりです。HR領域も大きな可能性があると考えています。企業に紐づく人材の情報もそれなりの量を保有しています。データ量がさらに増え、いまよりも精度高く分析や整理ができるように なれば、企業と人材のマッチングを最適化できるのではないかと考えています。自分に合った会社で仕事ができれば、生産性も上がりますからね。

会社としての軸をぶらさないことでしょうか。まず最初に良いプロダクトをつくるという考え方は今後も貫いていきますし、プロダクトドリブンの会社であり続けたいと考えています。
また、会社のバリューとして明示している「コト志向」という考え方も大事にし続けたいもののひとつです。これは、大きな社会課題を解決できる事業をつくるためにも、「事業やチーム、ユーザーのために何ができるか」に向き合い続けようというものです。

事業やチーム、ユーザーを最優先に意思決定するのが僕たちのやり方であり、社内政治のような立ち回りは一切評価対象になりません。コトに向き合っている人が評価され、コトに向き合っている人にとって働きやす い環境をつくることが優先される。これが社員全員の共通認識になっています。
そのため、社員には事業やチーム、ユーザーのために高いパフォーマンスを出すことにこだわって欲しいと考えています。当社はフルリモート・フルフレックス制度を導入していますが、これは働く場所や働き方を、毎日自分で意思決定して欲しいからです。今日出したい成果に対して、どこで仕事をするのが良いか、どれくらいの時間を使うのが良いか、自分で考えて自分で決める。そうすることで、目的に対して寄り道せずに真っ直ぐにアプローチできるようになると思っています。
ちなみに、当社のエンジニアはユーザーの声が聞けるので展示会が大好きなんです。ノリノリで参加して、スタッフとしてチラシを配ったり、ブースに来てくださった方に対して営業したりしています。ユーザーのためにみんなで良いプロダクトをつくろうという会社のカルチャーが出ていて、うれしいですし誇らしく思いますね。

セールステックの会社と括られることがありますが、僕たちは自分たちのことをデータベースの会社だと思っています。膨大なデータを自動で処理し、ユーザーの方にとって示唆になるような有益な情報がタイムリーにアウトプットされる、めちゃ くちゃ優秀なデータベースをつくる会社です(笑)。
今後もデータ技術とプロダクトドリブンの文化を武器に、独自性の高いデータベースを構築し、良いプロダクトをつくり続けていきたいと思っています。そして「生産性向上」という大きなテーマから目を背けることなく、真正面から課題解決にチャレンジし続けていきます。


株式会社ディプコア 代表取締役CEO
私自身が法人営業として働き始めた20年前は、もちろんこのようなサービスはありませんでした。当時は紙でアプローチするためのリストをつくり、架電して反応をメモ書きするというアナログなやり方だったことを覚えています。 村岡社長はインタビューの中で、「データや数字が苦手な方がいると思うので、できるだけシンプルな情報に加工して日々の営業活動にどう活かせるのかを示唆できるようにしたい。営業の方の強みは対人コミュニケーションだと思うので、強みを最大限発揮できれば生産性は必ず上がると思います」とおっしゃっていました。 確かに、顧客との商談にたどり着くまでに営業が使う時間は多いというのは自身の経験からも納得度が高いです。そして実はインタビュー時に教えていただいた同社のプロダクトやデータベースの強みを、社外秘のためここでは言いたくても言えないのがもどかしいです(笑)。まずは営業の領域で、本来の営業活動に専念できるようになる同社のサービスは、今後さらに広がりを見せていくのではないかと思います。

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